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かいこん ほこら
悔恨の小祠
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 思えば景虎もまた自責の念を抱え込みやすい人間だった。
(仰木高耶がそうであるということも、充分気付けたはずなのに)
 いや、既に自分は知っていたはずだ。
───罪悪感とか感じねぇのかよ
 加助たちのために単身乗り込もうとした高耶。
 あの行動がどんな感情から来ていたか。自分は知っていたはずだ。
 昨日の高耶の気持ちをちゃんと理解できていれば、もうちょっと気の聞いたことも言えただろうに。
 仰木高耶をもっとよく知らなければ、と思った。
 長秀はまるで自分が高耶をコントロールしているかのように言っていたが、実際は違う。
 たまたま言った一言が、うまく彼を刺激しただけのことだ。
 直江としてはまだ、高耶について理解できていない部分多すぎると思う。
 もっと理解を深めたい。
(理解を深めたい?)
 知って、それでどうするというのだ。
(彼を護るために役立てる)
 本当にそうなのか。
 記憶が戻らないように差し向けるつもりではないのか?
 もしくは記憶が戻っても、以前とは違う関係を築けるように?
 つまりは保身の為……。
「アネモネの花ことばってご存知?」
 はる香の言葉で、ハッと現実に戻った。
「アネモネの一般的な花言葉は"儚い恋"だとか"薄れ行く希望"だそうなの」
 薄れ行く希望。
 その言葉は直江の心の奥を締めつけた。
 長引く裁判。弱っていく身体。
 罪悪感から自分を救う手段を見つけられずに、ただ苦しいだけの日々。
 町田の心境に高耶と再会するまでの自分がシンクロしたように感じた。
「でもね」
 息苦しさを感じて眉根を寄せる直江に、はる香は優しく言った。
「白いアネモネには"真実"とか"真心"といった良い意味もあるのよ」
 はる香は先程とは打って変わって、穏やかに微笑んでいる。
 けれど、直江は苦い気持ちを拭いきれなかった。
 アネモネの英名は、"Windflower"。"アネモネ"という名前自体も「風」を語源に置いているはずだ。
 "真実"を意味にもつその白い花が、時流に敗け、枯れた花びらをあっけなく風に散らせてしまう様子を想像して、直江はどうしようもないやりきれなさを感じた。
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