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かいこん ほこら
悔恨の小祠
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 道男は、頭を打った可能性のある留美子を先に病院へ送り出し、現場検証を済ませてから病院へ向かうと言う。
 最後まで付き合うと申し出た二人に、そこまではさせられないと道男は辞退した。
「本当にありがとうございました」
「あんたも見たのか」
「え?」
 道男は高耶を見た。
「あんたも浩二って人をみたのか」
 ちょっと戸惑った後で、道男は小さく頷いた。
「信じてもらえるかわかりませんけど……」
 自分でも半信半疑といった感じで言う。
「ただ僕がみたのは浩二だけじゃありませんでした」
「だけじゃない?」
「大きな……二足歩行の動物で……強いて言うなら、雪男みたいなものが……」
 慎重に言葉を選びながら道男はそう言った。
「雪男……?」
「イエティっていうのかな……」
 つまりはヒグマのようなものだろうか。
「そいつが、浩二を口から吐き出した後で、もう一度飲み込んだんです」
「!?」
「突然視界に現れたから、僕はそいつを避けるだけで精一杯で……。そいつはあそこから下に飛び降りました」
 指を指した方向には防音壁がそびえたっていた。
 もっと詳しく状況を聞きたかったが、事情聴取が始まってしまったので結局現場を離れることにした。
「厄介なことになりましたね」
「………」
 とりあえず帰ろうと、車へ乗り込もうとした高耶の眼に、事故のブレーキ後が映った。
「高耶さん?」
 側へ行ってみると、そこだけ地面が濡れている。
「……?何だこれ?」
「オイルか何かが漏れたあとでしょうか」
 直江はわずかでも残留思念を感じ取ろうと感覚を研ぎ澄ませたが、拾い切ることはできなかった。
「随分と粘着質な液体ですね」
 ハンカチでふき取ってみると、その液体は透明な糸をひいて地面に垂れる。
 君たち駄目だよー、と声を掛けてくる警官に謝ってその場を離れた。
「本当に浩二さんの霊かどうか、調査しないといけませんね」
 これは彼を放置していた自分達の責任でもある。
「浩二ってやつじゃないとしても、事故を起こすような霊を放っておけないんだろ、あんたたちは」
「今日はこちらに一泊して、明日の朝"雪男"が降りたというあたりを調べてみます」
「あ、じゃあ俺も行くから午後にしろよ」
「いえ。いいですよ、ひとりで」
 それでも高耶は頑なに行くと言い張った。しまいには学校をサボってでも行くと言い出す始末だ。
 しょうがなく直江は折れて、明日の放課後、学校まで高耶を迎えに行くことになった。
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