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かいこん ほこら
悔恨の小祠
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「くっ……」
 腕を顔の前にかざして飛び交う砂利から身を守り、慌てて御狸を確認する。
 敵は既に立ち上がれる状態ではなかった。左半身がほぼ全てモヤのような状態に戻っている。
 苦しげに息をしながらそれでもなお、必死に起き上がろうとしていた。
 千秋は思わずぞっとした。
 それだけの念を放った高耶は息を乱すこともなく、《力》を使えたことが嬉しかったのか高揚感さえ窺える表情をしている。
 何気なく放った一発がコレか。《力》だけでいえば以前の景虎より更に上を行っているような気がする。
 いや、景虎であればきちんとパワーを抑えるような戦い方をしていたから、ちゃんと《力》がコントロールできていないということかもしれない。
(成田譲も化け物だが……)
 景虎も充分化け物だ。
 異物でも見るように高耶を見つめていた千秋は、その高耶の表情に疑問の色が走ったのを見た。
「!?」
 御狸に目をやると、下顎がカクンとはずれて不自然にだらりとしている。
 口内に透明のものがみるみるうちに溢れ出すのが見えた。
「来るぞっ!!」
 例の粘液だ。
 霊はグボグボッと奇怪な音をだしながら、高耶に向かってそれを吐き出した。
「っつ……!」
 転がって避けた高耶のすぐ横に、べしゃっと落ちた。
「まだ来るぞっ!」
 油断するな、と声をかける。
 浴びてどうなるものでもないが、帰りの車内のことを考えると出来る限り避けて欲しい。
 御狸の粘液の滴る口には、再び透明なものが溜まっている。

 ゴボボボオオオォォッ

 ふたつめが、今度は千秋に向かって飛んでくる。
 すかざず千秋はぱっと横に跳んだ。
「同じ手は食わねーっつーの!!」
 ズササァーっと着地した千秋は片膝をつきながら叫ぶと、憎きその塊を睨み付けた。
 相変わらず鼻を突くような臭いがする。塊をよくよくみると、妙な凹凸がある。
 目を凝らしてみて、息を呑んだ。
「げえっ……!」
「ちっ、ちあきっ!これって……!!」
 高耶も自分へ向かって落ちたものを見て、頬を引き攣らせている。
 なんと塊には顔があったのだ。
 というより、粘液が人の顔や身体を形取ろうと伸縮している。
「なんだ……これ……ッ!」
 粘液に霊魂が憑着しているのだ。
 土人形の兵隊ならぬ、粘液人形の兵隊のつもりか。
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