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かいこん ほこら
悔恨の小祠
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「で、なぜ譲さんと長秀が?」
 翌日、高耶を学校の近くまで迎えに行くと、制服姿の3人がぎゃあぎゃあと騒いでいた。
「俺は帰れって言ったんだけどぉ」
「だって今日こそ買い物に付き合ってくれるって言ってたのに!」
「だからぁ、わりーっていってんじゃんか」
「俺は俺で行くからご心配なく」
 千秋はレパードまで持ち出してスタンパっていた。
 いちおう成田譲を監視する、という名目で協力しているから、なるべく譲の元を離れない気でいるらしい。
「すみません、譲さん。別に私ひとりでもよかったんですけど」
 なにせこの人がどうしてもって言い張るもので、と言い訳する直江に、高耶はなにおうっと眼をむいた。
「いーんです。なるべく邪魔にならないようにしてるから」
「いざとなれば譲さんのほうが戦力になるかもしれませんねぇ。まだ《力》も使えない誰かさんと違って」
 わざとらしいその一言で、高耶の頭にはすっかり血が上ってしまった。
「早く行くぞ!」
 と、怒鳴りながら高耶はさっさとひとりで車に乗り込む。
 譲が笑いながら後に続いた。
「ノせるのがお上手で」
 ぼそっと言った千秋に直江が涼しげな視線を返したことなど全く気づく様子もなく、車内の高耶は頭から湯気を出している。


 国道147号線から長野自動車道の方へ向かって細い道を何度も折れたところに目的の場所はあった。
 200メートルトラック程の敷地内に雑多な木々が立ち並んでいる。
 手入れのされていない植物たちは好き好きに生い茂り、暗くて奥まで見通せない。
 どんよりとして、それこそ何かが出そうな雰囲気だ。
 入り口なんて気の利いたものはもちろん無く、獣道すら見当たらない。
「すげー湿気」
 高耶は顔をしかめた。
 もうすぐ夏とはいえ、標高約600メートルの松本周辺ではまだまだ肌寒い日もあるというのに、林の方からはまるで熱帯雨林のような、むわっとした風が吹いてくる。
 この中に制服とスーツで入っていくのはちょっと躊躇われた。
「ほんとにここなんだろうなあ?」
 千秋はすぐ上に見える高速道路に視線を送りつつぼやいた。
「のはずだが……。少し近所で聞き込みでもするか」
 直江が掲げた案は全員一致で採用された。
 元来た道を引き返して少し近所で聞いてまわってみる。
 しかし、具体的な目撃情報は得られなかった。
 あの森には自分の祖母の代から大きな狸が住んでるとか、このあいだ変死体が発見されたらしいとか、古くからある森や林にはつきものの、他愛もない噂があるだけのようだ。
 逆に何故そんなことを聞くのかとつっこまれ、授業の一環で地元の雑木林を調べている高校生と引率者という苦しい言い訳までするはめになった。
 仕方なくそのまま林へと引き返す。
 こうなったらもう、身体を使った調査しかない。
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