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かいこん ほこら
悔恨の小祠
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 高耶は心も身体もすっかり軽くなって、とても気分がよかった。
 自分の中に残っていた彼らの感情も、《調伏》とともに消え去っていた。
 自分なりに彼らを救えたことが高耶には嬉しかった。
 けれど、傍らの直江は先程から何も言わない。
 怒ってるのか厳しい表情のままだ。
 そんなことは初めてで高耶は少々戸惑っていた。
 一応、事の次第を話して聞かせた。浩二の想いも、町田の最期も、自分の調伏のことも。
 なのに相槌すら殆どないまま、高耶の家に着いてしまった。
 車を停めて、直江は降りろとも言わない。
 一体どんな表情をしているのか確かめるのが怖くて、眼もあわせずに、
「じゃあな」
 とだけ言って降りかけたところで、急に直江の左手が高耶の腕を掴んだ。
 驚いて振り返る高耶を強引に引き寄せると、そのまま助手席のシートに押し付けてくる。
「何だよ」
 直江の顔が間近に迫っていた。
 怒っているかと思った直江は、以外にも無表情に近かった。
 逆に、何を考えているのかわからない眼が怖くて、反射的に睨み付ける。
「こんな無茶をして、褒めてもらえるとでも思ったのですか」
 腕を掴む力が、指が食い込むほどに強くなった。
「痛ぇっ……」
 抜け出そうともがいてみたが、腕力では敵わない。
 なんだか本当にいつもの直江じゃない。
「そんなガキみたいなこと考えるかよっ。お前だって言っただろ、《調伏》されたほうが幸せかもしれないって。俺もそう思ったから……ッ」
「確かに言いました。けれど、思うところがあるのなら話して欲しいとも言いました。何故私に黙って事を急いたりしたんです。長秀が連絡して来なかったら、今頃どうなっていたことか……」
「………」
 確かにそうだ。高耶は意図的に直江を無視したことを自分でもよく解っていた。
 相談なんて出来ない。頼ることは許されない……。
 直江が怒ることはとっくに解っていた気がする。
 自分は一体どうして直江だけは駄目だと思うのだろう。千秋になら、よかったのに……。
 直江の瞳から視線を逸らした。
「悪かったよ、勝手に動いたりして」
「……心からそう思ってますか?」
「ああ」
 高耶は証明して見せるかのように強張った身体の力を抜いて、シートに身を預けた。
 それを見て、直江はやっと腕を離した。
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